決勝トーナメント進出を決め、抱き合って喜ぶ堂安(右)と森保監督
これぞベンチとピッチが一丸となった最高の勝利だ。森保監督の素晴らしい采配に、心から敬意を表したい。
1次リーグ突破をかけた大一番。その相手が優勝候補のスペイン。そして早々と1点をリードされ、後半を迎えた。ここで森保監督は勝負に出た。後半頭から久保に代え堂安、そして長友に代え、三笘を投入した。「攻める」という強烈なメッセージ。これまでの2試合、三笘はドイツ戦後半12分、コスタリカ戦は同17分と後半途中からの投入だった。しかし、この日はいきなりの投入。それも堂安との同時投入。これで一気に攻撃のスイッチが入った。
後半2分に堂安が同点弾。さらに同5分、田中碧が逆転弾。2点目は伊東→田中碧→堂安クロス→三笘折り返し→再び田中碧→ゴール!という素晴らしい連係から生まれた。攻めるという森保監督の意図を全員が理解し、一丸となって成し遂げた逆転劇だ。
そして2つ目の勝負手。後半23分、鎌田に代え冨安を投入し、右サイドに置いた。そして伊東を左に配置転換。今度は「守る」という明確なメッセージが込められていた。サイドを固め、DF5人、中盤4人のブロックはより強固になった。
そして3つ目の勝負手、後半42分、田中碧に代え、ヒザを痛めている遠藤を投入。「逃げ切る」ための最後の一手で、ブロックはさらに強固になった。後半に入り、スペインの運動量は明らかに落ちていた。ドリブルで仕掛ける選手もいなければ、長い距離を走る選手もいない。ひたすらショートパスで崩しにきたが、テンポに変化がなく、最後まで強固なブロックが崩れることはなかった。
ポゼッションサッカーがもてはやされるが、それだけでは勝てないのがサッカーだ。8割ボールを持たれても、1割ボールを持てれば勝てる。それがサッカーであり、日本はそれを見事に証明した。
次は念願の8強入りをかけてクロアチアと対戦する。厳しい戦いになるだろうが、次も3バックシステムで前線からプレスをかける戦い方が最も効果的だろう。スペイン戦では前田の献身的なプレスが大きな武器となった。きついし、楽しくないし、つらい役割だが、勝ち抜くためにはこういう選手が必要なのだ。
板倉が出場停止となるが、冨安が帰ってきた。谷口もいい仕事をしている。クロアチアに勝って、ぜひともブラジルと対戦してほしい。そして4強、ファイナル進出。ドイツに勝ってスペインに勝った日本が、W杯を手にしても何の不思議もない。いやいや、先走るのはやめよう。まずはしっかりとリカバリーしてクロアチア戦にすべてをかける。これまでどおり、全員がハードワークすれば、必ず勝てる。(元日本代表)