映画「激情」(C)GAINSBOROUGH FILMS/Album/共同通信イメージズ
【「表と裏」の法律知識】#161
先日、珍しいニュースが飛び込んできました。大阪・北新地のガールズバーで働く従業員同士のトラブルに対し、経営者がいわゆる「タイマン」を提案した上、タイマンの場として系列店を準備したとして、逮捕されたのです。ここで適用されたのは、「決闘罪」という、おそらく皆さんにとっては聞きなじみの薄い犯罪です。
決闘罪は、「決闘罪ニ関スル件」という、刑法とは別の法律に定められています。この法律は、明治22年に制定されたとても古いもので、一時期は廃止も検討されていましたが、暴力団員の果たし合いなどで適用があったことから、結局廃止はされず、いまだに当時の文言のまま残っています。近年では、少年同士の「タイマン」などで何件か適用があるようです。
決闘罪の処罰対象となるのは、①決闘を挑んだ者・応じた者(1条)、②実際に決闘を行った者(2条)、③決闘の立ち会いをした者・立ち会いの約束をした者(4条1項)、④事情を知って決闘の場所を貸与・提供した者(4条2項)となります。決闘という行為自体が、社会秩序に多大なる悪影響を与えることから、決闘の当事者だけでなく、決闘に関与した者も処罰対象になっているのです。
今回、ガールズバーの経営者は、事情を知って決闘の場所を提供した者にあたるでしょう。また、報道によれば、この経営者は、トラブルになっていた従業員に対し、自ら「タイマン」を提案したというのですから、その従業員同士の決闘をそそのかしたとして、決闘罪(及び決闘によりケガを負っていた場合は傷害罪)の教唆犯が成立することが考えられます。
今回は、決闘を見物していた者も複数人いたようなので、それらの者は、決闘に立ち会ったとして、決闘罪の処罰対象になることが考えられます。
最近は総合格闘技大会のBreakingDownのようにエンターテインメントとしての「タイマン」がはやっていますが、リング外での「タイマン」は犯罪になりますのでご注意下さい。
(髙橋裕樹/弁護士)