ホヤドレッシングの開発に携わった藤代俊久さん(左)とPRに取り組む関純麗さん=宮城県気仙沼市役所で2022年12月1日午後4時36分、土江洋範撮影
宮城県が全国一の収穫量を誇る海産物「ホヤ」。そのエキスを使ったドレッシングを同県気仙沼市の水産業者などでつくる団体が開発し、市内の小中学校に給食用として寄贈するためのクラウドファンディング(CF)を1日から始めた。出資者も金額に応じて最大10本までもらえる。クセのある見た目や風味から好き嫌いが分かれる珍味の魅力を地元の子どもたちや全国の人に知ってもらいたいというが、その出来栄えやいかに――。
全国屈指の漁港都市として知られる気仙沼市。水産関連など21社が集う「気仙沼水産資源活用研究会」は、「kesemo(ケセモ)」というブランド名で加工品開発に取り組んでいる。2013年の設立以来、フカヒレの成分を使った化粧品などを販売してきた。そして構想から約2年、満を持して完成したのがホヤドレッシングだ。
ホヤは魚でも貝でも植物でもない無脊椎(せきつい)動物で、ボコボコした形から「海のパイナップル」とも呼ばれる。五味(甘み、苦み、うまみ、塩味、酸味)を一度に感じられる珍しい食材だ。国の統計によると、21年の宮城県の収穫量は4400トンと全国の47%を占めた。一般的には刺し身などで食されるが、鮮度が落ちると臭みや渋みが出るため、全国区の知名度は低い。独特の味から地元の子どもにも敬遠されがちという。
そんな現状を打破しようと、研究会は発酵食品製造を手がける「いちからコーポレーション」代表の藤代俊久さん(69)を中心に、誰でも食べられるドレッシングを目指した。藤代さんいわく、ホヤは「うまみの塊」だ。クセのある風味やにおいを抑えた県産ホヤのエキスを加えることで、しょうゆベースの味わいをより深くすることに成功。タマネギのシャキシャキ感にもこだわり、サラダはもちろん、魚介のカルパッチョやギョーザ、焼き肉、パスタソースにもぴったりの自信作に仕上がった。
ホヤは栄養価も高く、研究会は学校給食に取り入れることで子どもの健やかな成長を後押ししたいという。CFをきっかけに地域外の人にもホヤに親しみを持ってもらいたいと期待する。事務局員でPR担当の関純麗さん(26)は「地元から全国に消費ニーズを広めていきたい」と意気込んでいる。
CFは12月31日まで、目標は50万円。出資額は2000円~12万円の10コースがあり、学校への寄贈本数(最大184本)と返礼本数(同10本)が変わる。ボトルのラベルは2種類から選択できる。申し込みは専用ページ(https://camp-fire.jp/projects/view/637130?list=projects_fresh)から。【土江洋範】