仲野太賀(C)日刊ゲンダイ
【桧山珠美 あれもこれも言わせて】
若手の仲野太賀の活躍がめざましい。今年だけでも「拾われた男」(NHK)、「初恋の悪魔」(日本テレビ系)、「ジャパニーズスタイル」(テレビ朝日系)と3本の連続ドラマで主演(うち1本はダブル主演)。すっかり主演が板についてきた。13歳で芸能界入り。当時の芸名は「太賀」だった。2008年の映画「那須少年記」で初主演。それ以後は「青い鳥」「桐島、部活やめるってよ」「男子高校生の日常」などの学園を舞台にした映画の生徒役の常連というイメージ。
出世作は16年の宮藤官九郎のオリジナル脚本ドラマ「ゆとりですがなにか」(日テレ系)だろう。岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥のゆとり世代の3人がメインのドラマだが、その中で、仲野は岡田の後輩で彼の説教をパワハラと騒ぎ、法的措置をとるゆとりモンスター・山岸ひろむを怪演した。そのモンスターぶりがあまりにもハマっていて、しばらく彼が苦手だったほどだ。そういう人は多かったらしく、「あさイチ」出演時には華丸も同じことを言っていた。
主役を食ったような名演技を見せた仲野へのご褒美か、その後、彼の演じた山岸を主役にしたスピンオフドラマ「山岸ですがなにか」も放送している。
菅田将暉がある番組で「演技がうまいと思う人は誰?」と聞かれて、「同世代だと仲野太賀。あいつと出会って頑張らなと思った」と語っていたこともあった。演技に定評のある菅田将暉にも一目置かれる存在で、ともに切磋琢磨して成長した感もある。先日、その2人が「ジャパニーズスタイル」で共演。迫真の芝居を見せていたのは、いわゆる神回だった。「拾われた男」でも、ほぼ実話で原作者の俳優・松尾諭も出演しているのだが、その松尾以上に松尾になり切っているから凄い。
デビュー当時は太賀と名乗っていた
ちなみに、このドラマは兄役の草彅剛、妻役の伊藤沙莉もいい。伊藤はこういうオンナいる、というリアリティーを出させたら一番かも。父親は中野英雄。親の七光といわれるのが嫌でデビュー当時、太賀と名乗っていたというのは有名な話。その反骨精神が仲野の原動力だったのではないだろうか。
2世つながりで成長めざましいのが寛一郎。彼も名字がないが佐藤浩市の息子、三国連太郎の孫だ。佐藤も三国も名乗らないところに太賀と同じにおいを感じる。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に出演中で公暁を演じている。27日放送「八幡宮の階段」は彼の演技にかかっていると言っていいほどの大役だ。
他にも、今期ドラマで密かに注目しているのは朝ドラ「舞いあがれ!」のヒロイン舞の幼なじみ・望月久留美役の山下美月(乃木坂46)と航空学校の同期・矢野倫子役の山崎紘菜、そして「クロサギ」の井之脇海。いい若手俳優を見つけると、彼らの成長も楽しみになる。
(桧山珠美/コラムニスト)