(写真:読売新聞)
秋田の冬の味覚として愛されているハタハタの不漁が続いている。今年の漁獲量予想も、禁漁明けの1995年以降で2番目に低い約200トンとされており、漁業者からは今後の見通しが立たない苦しい状況を嘆く声が聞こえている。
「このままだと冬の男鹿の海からハタハタがいなくなってしまう」。漁師歴約30年という、男鹿市の三浦幹夫さん(73)はそう肩を落とす。
三浦さんは産卵で沿岸に接岸する「季節ハタハタ」のために、12月上旬頃から船を出す。しかし、昨年の漁獲量は約300キロにとどまり、刺し網ではわずか1匹のみ。代わりにタコやヒラメなどを取って、同市のオガーレ(道の駅おが)に出荷する状況だといい、「現状は厳しい。周囲からも大漁だという声は聞かない。諦めている」と話す。
県水産振興センター(男鹿市)によると、ハタハタの漁獲量低迷は、近年の海洋環境の変化に伴う資源変動が主な要因という。2004年には3055トンと1995年以降で最多となったが、その後は減少に転じ、16年は845トンとピーク時の約3割に落ち込んだ。昨年も304トンと歯止めがかからず、今年の漁期(9月~来年6月)は、禁漁明けの1995年以降で2番目に低い水準となる約200トンとなる見通しだ。
同センターの中林信康・資源部長は「海水温の上昇といった要因があり、資源量自体が少ないことも考えられる」と話す。
歴史的な不漁を受け、県や漁業関係者らでつくる「ハタハタ資源対策協議会」は資源維持のため、事前に漁獲枠を設定する方式から、漁船の操業数と操業日数を掛け合わせて算出する「漁獲努力量」制度に昨年切り替えた。漁獲枠を設定すると、枠上限まで取ろうと漁船を必要以上に多く出すケースが見られたことなどを受けたもので、地区や漁法ごとに水揚げを行う日数に上限を定める。
さらに、共同操業による効率化や網目を大きくすることで小さな個体の漁獲を抑え、翌シーズン以降の漁獲増につなげたい考えだ。
ただ、10月25日に秋田市で開かれた同協議会では、漁業関係者から「禁漁前よりも悪い状況。採算が合わない」「水産者を守るための代替案があれば早急に示してほしい」「ハタハタ文化をなくすわけにいかない」といった声が上がった。
今年の季節ハタハタの初漁日予測は「12月4日の前後3日間」。同センターは「ハタハタに依存せず、漁業者の収益が上がる方法を今後検討していきたい」とする。