沖縄出身ryuchellさんと考える反撃能力など「防衛政策大転換」 石破茂元防衛大臣は“金額ありきの議論”に疑問…
“防衛費の増額”や“「反撃能力」の保有”など、今、日本の防衛政策が大きく変わろうとしています。自民党の石破茂元防衛大臣は金額ありきで進む議論に疑問を呈し“今こそ政治が積極的に説明すべき”と訴えました。沖縄では“台湾有事に備える”として自衛隊の配備が強化されていますが、地元からは「標的はいや」との声もあがっています。
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■沖縄で自衛隊配備強化 「標的はいや」の声も
在日アメリカ軍の専用施設の7割が集中する沖縄。いま、自衛隊の配備も沖縄を中心に進められています。“台湾有事に備える”というのが政府の説明です。
看板
「標的はイヤだ!!命(ぬち)どぅ宝(たから)=命こそ宝」
陸上自衛隊の駐屯地建設が進む石垣島。防衛省は500~600人規模のミサイル部隊などを配備する計画です。
山里節子さん(85)
「自分の島が無残な姿にされていくというのは、自分の生身が引き裂かれる思いだがらね。本当に見たくないです」
山里節子さんは、自衛隊配備に対する抗議活動を行っています。根底にあるのが沖縄戦の体験です。
山里さん
「戦争につながる何であれ、(戦争を)見せつけられたら理屈抜きに反対です。軍事基地のない道はいくらでもあると思います」
沖縄戦の際、旧日本軍は島の住民に対して、マラリアが蔓延していた山間部に、強制的に避難することを命じました。その結果、母をマラリアで亡くしたのです。
山里さん
「住民は足手まといになるから、押し込めた。守らなければならない国民を扱う態度なのか。その憤りが抑えられないですね」
与党間で合意に至った「反撃能力」の保有。
これまで日本は「専守防衛」として「相手から武力攻撃を受けたとき、初めて防衛力を行使する」ことを前提としていました。
しかし今後は、ミサイル攻撃などの兆候があったと判断されれば、発射前に相手国にミサイルを撃ち込むことが可能になります。
先に相手国にミサイルを撃ち込むことで“先制攻撃”と見なされる恐れもあります。
■石破氏「政治が語るべき」“金額ありき”に疑問
宮古島に配備されている「12(ひとに)式地対艦誘導弾」。防衛省はこの装備を改良し、射程を伸ばして「反撃能力」に使うことを計画しています。
岸田総理は12月5日、来年度から5年間の防衛費の総額を大幅に増額させ、約43兆円にすることを指示しました。
浜田靖一 防衛大臣
「5年間の中期防(中期防衛力整備計画)の規模については、与党とも協議しつつ積み上げで、約43兆円とすること」
元防衛大臣の石破氏は、額が先に決まったことに疑問を感じています。
石破茂 元防衛大臣
「岸田総理は最初、内容と予算をどれくらいにするのか。そして財源、これをセットで決めると言ってたはずですよね。この3点セット論がどこかへ飛んじゃって、まず金額ありきだと」
岸田総理は5月、防衛費は「内容・予算・財源」の3つ一体で考えると説明していたのです。
岸田総理
「具体的な内容が決まらなければ、それに見合う予算というものを申し上げることはできない。それに予算にふさわしい財源は何なのか、議論に進むことはできない。この3つは一体として進めるべき議論であると思っています」
石破氏は中国や北朝鮮のミサイル発射や、ロシアのウクライナ侵攻で“国民の不安が高まっているいまこそ、具体的な内容の説明が必要”だと考えています。
石破茂 元防衛大臣
「安全保障環境がどう変わっていったのか。そして日米安全保障体制でさらに強化すべきは何なのかってことを、聞く耳を国民が持っているときに政治が主体的に語らなきゃいけない。そもそも論は飛ばして、とにかく防衛力強化だ、反撃能力だということだけ語るのは、国民に対して最も良い態度ではないのではないか」
■ryuchellさん「放課後、普天間ヘリが墜落しているところを目撃して…」
小川彩佳キャスター:
ryuchellさんは沖縄県宜野湾市の普天間出身で、おじいさまはアメリカ兵だったんですね。
ryuchellさん:
そうなんですよね。普天間出身なので、遊ぶところもずっと幼少期から普天間だったので、当たり前のようにフェンスがあって、フェンスの向こうはアメリカ。だから良くも悪くも基地があるっていうことに、慣れてしまっているっていうのはあったかもしれない。
小川キャスター:
ただそこで意識が変わったというのが、2004年に宜野湾市で起きた、沖縄国際大学に普天間基地所属の米軍ヘリが墜落したという事件。これをryuchellさんは実は目の当たりにされたと。
ryuchellさん:
はい、そうなんです。今でも、本当にもう絶対に忘れられないんですけれども、放課後ヘリが墜落しているところを目撃して、あれがきっかけで良くも悪くも基地があるのが当たり前だったっていうものを、ちゃんと意識して考えないといけないなと。僕の生まれ育った島には基地があって、その問題を意識してしっかり自分の考えを持たないといけないなっていうふうに変わってきました。
小川キャスター:
2004年というと何歳ぐらいでしたか?
ryuchellさん:
小学校4年生の頃でした。本当に今でもしっかり覚えています。
小川キャスター:
衝撃的なその事件を経て、基地があるという日常で、日本の平和について考えてこられたryuchellさんですけれども、日本の防衛力強化についてはどんなふうに受け止めていらっしゃいますか?
ryuchellさん:
やっぱり正直不安もありますね。僕たち沖縄の子たちは特に平和学習をたくさん受けてきたんですね。戦争を二度と起こさないように、意識をして過ごしていくことが大切。戦争は、すごく昔のことだと思われているかもしれないけど、同じ人間が起こしたことなので、やっぱり繰り返して欲しくないっていう気持ちはあります。
山本恵理伽キャスター:
自衛目的で相手のミサイル発射拠点などを破壊する「反撃能力の保有」ですが、賛成が57%、反対が30%という結果でした。
「反撃能力の保有」について、東京と、ryuchellさんの出身地である沖縄、それぞれの街の声は…
東京・反対派 男性(20代)
「賛成ではない。反対派です。守るためと言っても先に攻撃してしまったら、狙われてしまうんじゃないかと心配で、あまり賛成できないです」
東京・賛成派 男性(20代)
「反撃できるんだよって外にアピールするのは、なかなか逆に手を出しづらくなるのかなと思う」
東京・賛成派 女性(40代)
「しょっちゅう北朝鮮からミサイルが来ましたとかニュースがあって、守り一辺倒で、いい加減にしてよってイライラもしますし」
沖縄・反対派 女性(10代)
「どちらかというと反対です。せっかく世界から評価されている平和な部分が少し廃れてしまうかなと残念に思います」
沖縄・賛成派 男性(20代)
「あまり良い印象ではないんですけど、どちらかというと賛成の立場ではあります。離島なので、身近に感じました。与那国とかの人の生活がかかっているので心配です」
沖縄・賛成派 女性(20代)
「今後アメリカがいつまで一緒にやってくれるかも分からないし、対抗できるかも分からないと考えると、ある程度を持つことも大事かなと」
■沖縄出身ryuchellさんと考える 「反撃能力」は必要?
小川キャスター:
ryuchellさんは反撃能力の保有についてはどうお考えですか。
ryuchellさん:
本当に難しいところで、軍事で守るということが必要という意見もものすごくわかります。ただ守ってもらうという形というのも、しっかり提示がない分、わからない部分もあります。自分は、平和学習で平和に対する意識がすごく染みついているし、それを忘れてはいけないと思うので、軍事を強化することによって、また戦争になってしまわないかっていう不安はどうしてもありますね
小川キャスター:
反撃能力の保有であったり、防衛力強化、そして防衛費の増額について、予算だったり財源の議論が先行して、中身の発信がなかなかないんじゃないかとお感じになることも多いと思うんです。
ryuchellさん:
そうですね。それこそ防衛費などの中身に関して、しっかり提示があれば、納得というか賛成の方ももっとより増えていくんじゃないかなって思います。その説明があるとやっぱり全然違うなっていうふうに思いますね。何よりも関係ない人や住民の方を巻き込まない、という安心感や提示がしっかり欲しいなと思いますね。