親との関係で苦しまないための根本的解決法とは?(写真:Taka/PIXTA)
20〜60代の大人になっても親から支配や依存を受けていて、そんな状態から脱出できずに苦しんでいる成人以降の人たちがいます。親との関係で苦しまないための根本的解決はどのようにしたらいいのでしょうか。 大人になってからの親との関係に悩んでいる人たちを専門にサポートする親子関係カウンセラー、川島崇照さんの著書『嫌いな親との離れ方』から一部抜粋、再構成して、子どもに頼りかかろうとして、支配や依存をしてしようとしてくる親への対応方法について解説していきます。
親に期待を持たせず、あきらめさせる
心に強い不安を抱えて、その不安が子どもから与えられたものだと錯覚している親。
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そんな親は、自分の心と子どもの心がくっついている癒着の状態になっています。
そして、子どもの思考や行動を見ては不安を感じ、なんとかして変えさせようとして否定や批判してきます。
さらに、境界線を超えて子どもの領域に侵入し、価値観や感情、責任を押しつけてコントロールしようとして、子どもの心を傷つけてしまいます。
もし、親子関係のさまざまな不具合が起こっている人は、どのようにしていったら解決できるのかと思うことでしょう。
私の経験から言えば、そんなとき、まずいちばん大事なことは、「親に期待を持たせず、あきらめさせること」です。
子どもを支配し依存しようとして頼りかかってくる親というのは、心が自立していません。
だから、親の領域での責任を親自身の力で果たそうとしないし、親自身の問題なのに子どもを利用して解消しようとしてしまいます。
そんな親は子どもが従っている姿を見ると「親の私が正しかったから子どもは従ったんだ」と思って満足感で気分が良くなります。
最初、その満足感は「きっと、子どもはまたやってくれるはず」という小さい期待だったかもしれません。
しかし、子どもが従い続けていると「子どもがやって当たり前」という親の期待に変化していきます。
さらに従い続けていると「なんでもっとうまくやれないんだ!」のような被害妄想になって、子どもを攻撃するようになります。
そして、「以前はアレをしたら子どもは従ったから、今日もアレをしたら従ってくれるだろう」とか「きっとコレを言えば親の私を支えてくれるだろう」と考えて、すでに大人になっていて別の人生を生きている子どもをコントロールすることばかりで頭がいっぱいになっていきます。
そんなときの親は「自分でやる」「問題が起こらないように自分が気をつける」という発想はなく、子どもに過大な期待を寄せながら生きています。
親が期待をたくさん感じるほど、子どもをコントロールしたいという欲求も強くなり、ますます自立していきません。
だからこそ、親に期待を持たせないこと。
具体的には、親が「どうせ何をしても子どもをコントロールできないだろう」という気持ちを感じるような関係性を「子どものほう」が作って、あきらめてもらうことです。
期待を持たせずあきらめさせる3ステップ
支配や依存をしようとしてくる親への対応は3つのステップで構成されます。
1.まずは傷ついているという気持ちを伝えること 2.何を言われても・何をされても従わないし受け入れないという考えを伝えて断ること 3.やると言ったことは素早く行動に移し、やらないと言ったことはやらないという態度を示すこと
期待を持たせないためには、親が満足感を持てない状況をつくることが重要です。
それは、要するに親に従わないということです。
傷ついているという気持ちを伝えることは、親をあきらめさせるためには重要です。
たぶん、親は子どもを傷つけているという意識はほとんどと言っていいほど持ってはいないでしょう。
それよりも、自分は子ども思いな良い親だと思い込んでいることが多いですね。
だからこそ、子どもへの執着心が止まらないのです。
「自分は良い親で、子どものためになれている」や「良い親である私に従わない子どもが悪い」と思っているから、子どもが親の期待を叶えて当たり前という意識をつくられていきます。
そんなとき、まずは子どものほうから、今までずっと親の言動で傷ついていたということをはっきりと伝えなければなりません。
そして、子どもは納得して親に従っていたわけではなかったということを認識させることからはじめます。
次に重要なことは、従わないという考えを伝えて断ることです。
もうすでに「傷ついていた気持ち」という理由は伝えてありますから、ここでは「私はやりたくない。何があっても考えは変わらないよ。」のような言葉で断っていくだけです。
そして最後に、実際に行動することです。
親が子どもの選んだ生き方を否定して反対しているなら、気持ちを伝え、断ったあとは、できるだけ間をあけずに行動に移すのがいいでしょう。
親が子どもに何かをやらせようとしているなら、やっぱり気持ちを伝え、断ったあとは、距離を取って、やらないという態度を見せ続けることが大事です。
同じ態度を「4回」見せて学習させる
親にあきらめさせるために断っていく回数は、理論上「4回」です。
1回目は想定内。
親は1回くらい断られてもあきらめません。
なぜなら、今までもずっとそうだったからです。
1回程度の断りは、親も経験済みなので、新たに学習することはありません。
親の期待はまだ100%残っています。
でも、2回目にもきっぱりと断ります。
やりたくないことは断って行動もしません。
やりたいと思うことは、親に許可を取らなくても実行します。
そんな子どもを見た親は、今までどおりに従わせられないので、やりづらさを感じます。
でも何かの間違いだと思って、今までどおりの方法でコントロールしようとするでしょう。
今までの方法が通用しないという経験をすることによって、親の不安は強くなっていきます。
この段階での、親の期待の量は60〜80%程度です。
親はまた否定してきますが、3回目もきっぱりと断ります。
親は、どんなに否定しても従わずにどんどん行動していく子どもを見て、もうこのままコントロールできなくなるのではないかと思いはじめます。
あきらめきれない親は、他にいい方法はないかと探しますが、見つかりません。
なんとかして子どもをコントロールしたくて、「親子の縁を切る」などと冷たく言い放ったり、「従わないなら親がかけたお金を返せ」なんて言ったりする親もなかにはいます。
今までの方法では子どもをコントロールできそうにないと悟った親は、最後に強く罪悪感を煽あおって勝負に出ます。
この段階での、親の期待の量は40〜60%程度です。
親から「縁を切る」と言われても、4回目もきっぱりと断っていきます。
そうすると、親は何をしてもコントロールできないという発想が強くなって、「どうせ言っても無駄だし、自分がつらくなるだけだから」と思い、子どもとの関わりを少なくしていきます。
何をしても従わない子どもを避けようとする親の心理は、あきらめの一歩手前の「拒絶」です。
ここまでくると、親の期待は元の状態と比べて半分以下になっていて、最後の悪あがきをしながら一生懸命に従ってくれていた子どもを忘れようとして、あきらめに変化していきます。
この段階での、あなたへの期待の量は20〜40%程度です。
こうやって、子どもが親に新しい態度を見せていくことで、思いどおりにコントロールできないことを学習した親は、期待を不安に変え、不安を拒絶に変え、あきらめを増やしていきます。
この「4回」をあらゆる場面で見せていきながら、あきらめが勝っている状態を持続させることが重要です。
親の期待はいくつもありますから、そのたびに毅然とした態度を見せて、学習させていきます。
親を変えよう、わからせようとしなくていい
ここで気をつけてもらいたいことがあります。
それは、親を変えようとしたり、わからせようとしたりすることです。
変えたくなったり、わからせたくなったりするときは、親の考えがいかに間違っているのか、子どもの考えがいかに正しいのかを何度も説明して、反省させようとしているときかもしれません。
でもそれをすることは逆効果です。
なぜなら、親は子どもがすぐに行動に移さない姿を見ていて、まだ説得できると思って、期待が減っていかないからです。
親をいち早くあきらめさせるには、傷ついているという気持ちと、もう二度と従うことはないという考えをストレートな言葉で伝え、さらに素早く行動に移すことが大事です。
でも、実際に行動しようとすると、自分がとてつもなく悪いことをしているみたいに感じてしまう人も少なくないはず。
そんなときは罪悪感や恐怖心で身動きが取れなくなっているときかもしれません。
親に本心を伝えること、従わないこと、認めてもらえなくても自分の意思で行動することなど、今までやってきたことのないことばかりで「本当にいいのだろうか?」と思って迷い、「親を裏切っているのではないか」と自分を責めてしまうという人は実際にたくさんいます。
そして、「もう少し頑張って説明していたらわかってくれるんじゃないか」と思って、何度もかけあったりしますが、やっぱり否定されて心は傷つき、「どうせ何をやっても無駄なんだ」と落ち込んで、子どものほうがあきらめてしまっていたというケースはこれまでもたくさん見てきました。
このように、新しい行動を起こそうとするときに、幼少のころから言われ、見続けてきた親の言動が、罪悪感や恐怖心となって降りかかり、行動できなくなる大きな要因となってしまいます。
親の領域と子どもの領域には境界線がある
これも小さいころから心をコントロールされてきた影響です。
罪悪感や恐怖心を減らすには、境界線を意識することです。
もし親から価値観を押しつけられたら、「親の言っていることは真実なのか?」「すべてのケースにおいてそれが正しいのか?」「誰が聞いても正しいのだろうか?」と自分自身に問いかけるのがいいでしょう。
もし親から感情を押しつけられたら、「私は本当に親を傷つけたのだろうか?」「私こそ親が生み出した不安の感情を押しつけられているのではないだろうか?」とどちらの領域で生み出された感情なのかを確認するのが大事です。
もし親から責任を押しつけられたら、「それってそもそも誰がすることなのか?」「子どもの私がそれをする責任は本当にあるのだろうか?」「私がそれをして親の自立を妨げはしないだろうか?」と考えてみる方法があります。
今までのように盲目的に親の言葉に従うことをやめて、自分自身で考えて、判断して、決断することが大切です。
そもそも、親と子どもの人生は別々です。
親の領域で起こっていることは、子どもの領域に影響を与えません。
反対に、子どもの領域で起こっていることも、親の領域に影響を与えません。
ですから、親が言っているような「子どもから傷つけられた、裏切られた」ということは実際に起こってはいないということです。