大原則は、「出し入れしやすい場所」=「楽な姿勢・短時間で必要なアイテムにたどり着ける高さ」(写真はイメージです) Photo:PIXTA
指摘されないと気づきにくい
「なんか変」な片づけ動作
整理収納サポートの現場では、「なぜ、そうなった…?」としか言いようがない、片づけの理不尽なルールにたびたび遭遇するものです。
私が過去一番驚いたのは、依頼者が毎朝飲んでいるお茶やコーヒー、スティックタイプのサプリメントがキッチンの最下段の引き出しに入っていたのを見たとき。彼女は毎朝、“ヤンキー座り”で飲み物を選んでいたのです。「これを毎朝ですか…めんどくさくないですか…?」「確かに…変ですね」というやり取りは忘れられません。
こんなふうに、毎日の身支度や家事がまるで「障害物競走」のようになっているケースは、決して珍しくありません。なぜ、そうなってしまうのでしょう?
それは、「今使っているモノ」と「出し入れしやすい場所」の組み合わせがチグハグだからです。
私は、『家じゅうの「めんどくさい」をなくす。』という本で、「人は『めんどくさい』という感覚には絶対に逆らえない」と伝えています。障害物競走のような片づけルーティンはまさにこれ。厄介なことに、日々使っている場所だと、そのめんどくささにさえ鈍感になってしまうのです。
今回は、「日常生活を障害物競走にしている収納3パターン」を紹介しつつ、どうすればスムーズになるのか、改善策を解説していきます。
日常生活を障害物競走にする収納(1)
やたらと背伸びしたりかがんだりする
冒頭のケースでは日常のお茶セットがヤンキー座りで出し入れされていましたが、一般的には、つり戸棚から背伸びして出し入れされることが多いですよね。「普段は手前側にあるものを飲んでいるけれど、テレワーク勤務も増えたし、もっと他のフレーバーも楽しみたい」「ティーバッグの大袋を詰め込んでしまったので、奥にしまったモノが見えないし手も届かない。前におみやげでもらった中国茶もどこかにあるはずなんだけど…」といったボヤキをよく聞きます。
大原則は、「出し入れしやすい場所」=「楽な姿勢・短時間で必要なアイテムにたどり着ける高さ」です。「今使っているモノ」はすべてこのエリアに集めていきましょう。
●まとめて使うアイテムは、高い場所のままアクセスよく
お茶やコーヒーなど、その時々で使うモノを選びたい場合は、まとめて取り出せる方が便利。取っ手付きのケースを導入しましょう。無理にひとつのケースに収めるよりも「厳選の1軍」「その他の2軍」でケースを分けた方が使いやすいです。
お茶やコーヒーは、箱入り、缶入り、袋入り、ティーバッグ、真空パックなど、形状もさまざま。控えの2軍用には、透明かつできるだけ大きな取っ手付きケースが間違いないでしょう。入れたモノも忘れにくく、収納棚の使いやすいエリアを縦に大きく広げられて一石二鳥です。
●バラで出し入れするアイテムは、見下ろせる下段に移動
食品保存用のコンテナケースは数が多い上に、使う・戻すのタイミングもバラバラになりがち。目当てのモノに直接アクセスできて、戻すときもワンアクションで済むように、全体をずらっと見渡せるしまい方がベストです。引き出しタイプのキッチン収納なら、最下段の薄くて幅の広い引き出しに移動させるとよいでしょう。
扉タイプのキッチンなら、棚の下段を定位置にして、棚板の高さに余白をたっぷり設けるようにすれば、アクセスがグッとよくなります。
●低すぎる場所は「底上げ」
キッチンの引き出しで、腰をかがめて鍋やフライパンを出し入れしている家庭も多いでしょう。それ、地味に辛くないですか? 試しに、出番の少ない寸胴鍋や圧力鍋を下に、よく使う両手鍋やフライパンをその上に置いてみてください。この「底上げ」で、取り出す動作の負担が全く違ってくるはず。他にザルやボウル、米びつなども底上げするのがおすすめです。
この方法は、クローゼットでも応用可能。プラスチック収納ケースの開け閉めがモコモコしたニット類で詰まり難しい場合、あえてケースの引き出しを枠から出してカゴのように上に乗せ、ニット類の投げ込み収納として使うのもありです。
日常生活を障害物競走にする収納(2)
やたらと左右にウロウロする
一見スッキリ片づいている衣類収納も、「毎朝どういう順序で身支度していますか?」と尋ねると、思いがけない実態が見えてきます。
下着と靴下は洗面所、インナーとトップスは寝室のチェスト、スカートはウオークインクローゼットのハンガーラック、部屋着だけは子どもの衣類と一緒にリビングのチェストに入っている…みたいな話、それほど珍しいケースではありません。着替え終わるまでにどれだけ家の中をウロウロしているのか、想像してみてください。
「出し入れしやすい場所」=「ムダな横移動がない」です。オンシーズンの衣類収納は、たたみ方の工夫や収納グッズを活用する前にまず、「同じ収納箇所にまとめる」ことを考えましょう。
●アイテムは「使用シーン」でまとめ直す
種類や形、大きさでまとめるのをやめて、「平日朝の着替え」「帰宅後の着替え」「休日の着替え」といった使用シーンで収納場所を見直してみませんか? テレワークが定着して平日に着る服がガラッと変わったのに、クローゼットはオフィス通勤仕様のまま、という人がまだまだ多い印象です。現状に合わせて見直すとかなり快適になり、やってみる価値は大きいですよ。
その際、「そこで脱いだモノを“ウロウロせずに”片づける工夫」も併せて考えるとさらにいいでしょう。「朝の着替えエリアに、脱いだパジャマを入れるカゴの置き場も必要かな」「帰ってきて脱いだ靴下を、すぐに洗濯カゴに入れられる場所に、部屋着も置くといいかも」といった感じです。
同じことが食器でも言えます。「使用シーン(毎食/朝/夜/週末/個食/弁当作り)」ごとに同じ棚、同じ引き出しに使う食器を集めるのです。扉タイプの収納であれば、左右どちらかを開けるだけで一式そろえればベストオブベスト。
日常生活を障害物競走にする収納(3)
隠されたモノを手探り・目探り
リビング収納に詰め込まれた、たくさんの缶や箱。サポート依頼者さんと、「この箱にはボールペンが入っていますけど?」「そういえばそんなのもありましたね」。「こちらは何ですか?」「おみやげのキーホルダーだ。懐かしいな」などと、一つひとつ開けながら確認したこともあります。フタをしてしまうと、しまった本人ですら中身を忘れやすくなります。ムダな縦移動&横移動をなくした後、最後の最後に気をつけてほしいのが「見えなくする」トラップです。
●フタは外す
フタをするかしないかの線引きはシンプル。「今使っているモノにはフタをしない」「フタをするのは、使うけど今じゃないモノ」です。棚や引き出しに入れた文具や、回転の早い日用品のストック、子どもの1軍おもちゃのケースにフタは不要。すぐに外しましょう。「フタをすれば重ねて収納できる」と思う人は、そのメリットは「使うけど、今じゃないモノ」に活かしてください。子ども用品のお下がりなどにはとても向いています。
なお、「フタに見えないフタ」もあります。クローゼットを思い出してみてください。ロングコートやワンピースの下に、チェストが埋もれていませんか? それ、フタをしているのと同じですよ。チェストの上に掛けるのは、空のハンガーか丈の短いボトムスにしてみてください。視界が開けて、使いやすくなります。
●ケースは浅くする
大きい袋菓子に合わせて大きなケースに食品をまとめている家庭が多いのですが、これだと小さいモノは埋もれていきます。実際に、埋もれて腐っていたバナナ、カビの生えたパンを触ったことがある私は声を大にして伝えたい! 食品に限らず、使っていく前提のモノを入れるのは、死角のない浅いケースがおすすめです。
今回は、日常生活に潜む障害物競走のような片づけルーティンについて、その見直し方と具体的な改善策を解説しました。実はこれ以外にも、「洗濯動線がジグザグ・くねくねの家具配置」など、片づけを理不尽にしている「片づけのめんどくさい」はたくさんあります。『家じゅうの「めんどくさい」をなくす。』という本でより詳しく解説していますので、読んでみてください。